補償導線の中継に銅線を使用するとどうなる?
皆様、いつも弊社のブログを読んで頂きましてありがとうございます。
今月ブログを担当させて頂きます、営業のKと申します。
今月は、「補償導線の中継に銅線を使用するとどうなる?」をテーマに書いていきたいと思います。
基本的に熱電対と温度表示機をつなぐリード線は専用ケーブルである補償導線を使用して頂かなければ正確な温度測定が出来ないのですが、ある"特定”の環境下においては熱電対と補償導線の中継に異種金属を使用しても問題無いケースが存在します。
例えば熱電対と補償導線の中継に一般的な銅線を使用した場合、測定温度と表示温度に誤差が発生するか?
温度測定に影響が出ないか?を以下 の ”4つ” の状況を基に検証させて頂きます。
例1)接点AB間に温度差が無い場合(接点間に補償導線)
例2)接点AB間に温度差が無い場合(接点間に銅線)
大前提としてゼーベック効果による熱起電力の発生の原則『異種金属の両端末を接続し、両端末に温度差が生じた時に熱起電力が発生する(逆に温度差が無ければ熱起電力は発生しない)』がございます。
例1)、例2)のような接点A・Bに温度差が無い場合は上記のゼーベック効果の原則から熱起電力が発生ませんので、補償導線を使用しなくても一般的な銅線で中継しても温度測定に影響はございません。(注:あくまでも中継する両接点に温度差が無いケースに限ります。)
この両接点に温度差が無ければ補償導線や熱電対線の中継に異種金属を使っても温度測定に影響を与えないという法則を『中間金属の法則』と言い、この特性により中継の両接点に温度差が無ければ熱起電力を発生しない銅線を使用しても温度測定の結果に影響が出ないという事が実証されております。
次に熱電対と補償導線の中継の両接点に温度差がある場合を検証します。
例3)接点AB間に温度差がある場合(接点間に補償導線)
例4)接点AB間に温度差がある場合(接点間に銅線)
例3)と例4)の場合では、接点A・Bに40℃の温度差があります。
両接点間に温度差がある場合、例3)の補償導線であれば上記のゼーベック効果の原則から40℃の温度勾配分の熱起電力が発生し温度補償されますので、表示温度に正しく100℃と表示します。(補償導線と熱電対の許容誤差範囲内で)
しかし例4)のように銅線を使用して中継した場合は、補償導線と違い両接点の温度差40℃の温度勾配分の熱起電力が発生せず、温度補償がされないため、測定温度と表示温度に誤差が発生してしましまいます。
例4)では銅線による温度補償が無い為、合計の熱起電力が約2458㎶になり、計器には実際の温度と違う60℃と表示されます。
銅線を使用した場合に熱起電力が発生しないのは、『均質回路の法則』という原理によります。
これは『接続する金属の対(ペア)が同質の金属線(均質な金属線)同士で接続しても熱起電力は発生しない』という法則で、銅線と銅線の両接点を繋げて、両接点に温度差を与えても、両方同質(均質)の金属のため熱起電力は発生しません。
逆に熱電対・補償導線の熱起電力導体は、対(ペア)が異種金属同士(例えばK熱電対であればクロメルとアルメル)のため、両端末を接続し、その両端末に温度差を与えると熱起電力が発生するゼーベック効果を利用して温度計測をしています。
おわり
以上4つの例を取り上げ熱電対と補償導線の中継として銅線を使用するとどうなるか検証しました。
実際の現場では、上記例で言う所の接点A・Bの周囲温度は常に変化していると考えられますので、仮に補償導線の代わりに銅線で中継した場合はその両接点に少しの温度差でも発生すると表示温度の誤差発生の原因になります。以上の理由から、正確な温度測定を行う為に、熱電対を使用した温度計測のリード線には銅線ではなく補償導線のご使用をメーカーとしてお願い致します。
それでは、今月のブログも読んで頂きましてありがとうございます。今後とも福電をよろしくお願いいたします。